一杯30mlの高級日本酒有料試飲コーナーでは、龍力・黒龍・飛露喜・十四代などがずらり。1,500円と最も高かったのが十四代で、あとは1,000円と500円。Kさんと足立さんが3つを飲み比べ、水を含んでは味を楽しむが、「うまい」「香りがいい」の連発。
丸テーブルの上にはフードコーナーの品が並ぶ。酒愛好家がつめかけていて、見知らぬ人々がテーブルを囲み、酒談義が始まる。私たちと同席されたのは、大阪から来たという35歳ぐらいのカッコイイ青年。今年の全国新酒鑑評会で金賞を受賞した「片野桜(山野酒造株式会社)」が、彼のお勧め。彼が言うには「華やかな味」。早速足立さんが口にして、「ホント華やか」。
それにしても、会場には若い女性が多い。それも、姫路・明石・大阪はもとより、全国各地から来られている。甲南の同窓生、Iさんにも会った。このフェスティバルのスタッフの一人で活躍しているそうで、いろいろ学ばせてもらった。
彼が言うには、
「今年、WHOでアルコールが人間の健康に害があるとして、麻薬・たばこと同様にアルコールが入った。そこで、日本酒もより良い質を求めていかねばならないし、飲み方も考えてもらわないといけない。しかし、今や小泉政権で酒の流通が破壊されたため、大手スーパーが酒造元に過度の要求をして、質はともかく安価を求められ、苦しんでいる」「これでは、日本各地の秘宝とも言うべき酒造技術が破壊されかねない。最後の生き残りをかけての戦い」だそうだ。一方、「愛好家も、がぶ飲みせず、酒をじっくり楽しんで欲しい」とも。
待合室には、”飲んで大声を出さない””座り込まない””飲み過ぎないで下さい”などと書いてあり、会場に流れるアナウンスも、飲み過ぎないように、注意が度々。普通の酒席なら「大いに飲んでたらふく飲んで下さい」と言うのだろうが、これは、試飲会ならではのお酒の楽しみ方。Iさん曰く「茶道・華道の他に、酒道もあったのです」。なるほど、面白い。そういえば食通のKさんが、「酒と女は2ごうまで」と言ってたなぁ…。
ところで、こんなにたくさんの人々が各地から集まっているのに、神戸市の職員が一人もいない。意見を聞くと十人が十人、「次も来る」と仰る。「楽しいし、入場料の2,000円は安い」からだそうだ。「ただ、プラスチックの容器は辞めて欲しい」とか、「あては塩だけでもいい」「ホテルでなければいけないのか」といった意見も。私はこのままでいいと思うが、もっと酒の種類を集め、もっとIさんの言う「酒道」を打ち出しても良さそうだ。
とにかく、神戸市はもっと地場産業を大切にしないと、大きなものを失うことになると、つくづく思ったのだった。